【中学1年】映画『東京干潟』鑑賞会ならびに村上浩康監督との対話
昨年、話題になったドキュメンタリー映画があります。「TOKYO HIGATA PROJECT」と題されて
撮影された映画、『東京干潟』です。
『東京干潟』は、多摩川の河口でシジミをとって暮らすホームレスの老人の生き様を、村上浩康
監督が2015年から追い続けた映像の記録。 そのおじいさんは、 シジミを売って得たわずかな
お金で10数匹の猫と一緒に生活をしています。しかし、2020年のオリンピックを目前に、開発の
波が押し寄せ、おじいさんがシジミを獲る干潟も次第に減少していくのです。
中1学年では去年の11月27日、ロングホームルームの時間に『東京干潟』の上演会を行いました。
まず初めに、 映画全編の鑑賞(83分)。 そして、 その後に学年全体での意見交換となりました。
中1生からは「おじいさんは今が一番幸せと言っていたが、幸せとは何なのか考えさせられた」など
なかなか鋭い感想が出されました。

そして、 生徒たちには全く知らせていなかったのですが、サプライズのゲストとして、映画監督・
村上浩康氏が突然の登壇。 講堂はどよめきに包まれました。 まずは、 監督からのメッセージ、
続いて、生徒との質疑応答へと展開していきました。 中学1年生にドキュメンタリーを見る力が
どれほどあるのか、心配もありましたが、出された質問は「ラストシーンの音声の意味」「先日の
台風での干潟への影響」「おじいさんの背景に発展した建造物を描くことの象徴性」など、非常に
知的なものばかりでした。

鑑賞会終了後に書いてもらった感想シートには、大変示唆的なものが並びました。
〇日頃見る映画とは違い、はっきりと作者の伝えたい現実問題があったので、
とても考えさせられた。定期的に映画に登場する猫の表情が、自分を捨てた
人間へのうらみを表現しているように思えた。
〇自分たちが時間に追われて生活している間にも、時間などにとらわれず生活
している(それも幸せに)人がいる。 「ホームレス」という言葉で抽象化
してはならない。
〇人間も猫も、すべてのものは生きる権利があって、それがあるからこそ、また
それを信じているからこそ、おじいさんは生きられるし、猫たちも命をつなげて
いけることがとても感慨深かった。
村上監督は、 生徒たちが書いた感想シートに、すべて目を通していらっしゃいました。
映画の作り手との直接対話、今回は本当に貴重な機会を頂いたと考えています。
駒東は『本物に触れる』ことを大切にしています。そして中1学年では『他者を理解する』
ことを大きな目標としています。今回のドキュメンタリー鑑賞の経験が生徒たちにとって、
何かしらの刺激になればと念願しています。
村上浩康監督が「新藤兼人賞・金賞」(=映画界の新人賞)を受賞されたことも聞きました。
おめでとうございます。このたびのご縁に、心から感謝いたします。